小学生の家庭学習に「やる気スイッチ」が入る声かけ10選

この記事でわかること
  • 子どもが家庭学習に前向きになる“声かけ”のコツがわかる
  • 実際に使える「やる気スイッチ」フレーズを10個紹介
  • NGな声かけとその言いかえ例も合わせて学べる

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声かけひとつで、子どもは変わる

「早く勉強しなさい!」
思わず口にしてしまったあと、後悔した経験はありませんか?
一生懸命だからこそ、つい強い口調になってしまう――それは、どのご家庭にもよくあることです。

でも実は、子どものやる気を引き出すカギは“言葉のかけ方”にあると言われています。
同じことを伝えるにも、「言い方ひとつ」で、子どもの反応はがらりと変わります。

本記事では、心理学の考え方と、家庭や学校での実践をもとに、
家庭学習で子どもが前向きになる“声かけ”のヒントを10個ご紹介します。

読んだあとすぐに使えるフレーズや、ちょっとした工夫がいっぱいです。
「また頑張ってみようかな」と、お子さんが思えるような声かけを、今日から一緒に始めてみませんか?

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今日から使える声かけ例を厳選。
小学生のやる気を引き出す言葉を、親子の会話にすぐ取り入れられます。

「やる気」を引き出す3つのカギ

子どもに「やる気を出しなさい」と言っても、なかなか行動にはつながりません。
でも、やる気がないのではなく、やる気の“出し方”がわからないだけかもしれません。

心理学では、人が前向きに何かに取り組むためには、3つの基本的な心のニーズが満たされる必要があるとされています。これは「自己決定理論(Self-Determination Theory)」と呼ばれ、教育現場や子育てにも広く応用されています。

やる気を支える3つの要素

  1. 自分で決められること(自律性)
    「やる」「やらない」を自分で選べることで、主体性が育ちます。
  2. できそうと思えること(有能感)
    「前よりできた」「がんばったらうまくいった」という実感が、自信につながります。
  3. 誰かに見守られていること(関係性)
    「応援してくれる人がいる」「自分をわかってくれる人がいる」ことで、安心して挑戦できます。

たとえば、「今日はどれからやってみようか?」という声かけには、「自分で決められる」選択肢があります。
「ここまでできたね、すごい!」という言葉には、「できた!」という達成感があります。
「困ったらいつでも呼んでね」と言えば、「見守られている」安心感が伝わります。

つまり、親のちょっとした声かけが、子どもの“やる気スイッチ”を入れる起点になるのです。

学びの意欲は、生まれつきの性格ではなく、日々のやりとりで育つもの
この章をヒントに、声かけを少し工夫するだけで、ぐっと前向きな空気が生まれます。

参考:Deci, E.L. & Ryan, R.M. (2000). The “What” and “Why” of Goal Pursuits: Human Needs and the Self-Determination of Behavior. https://psycnet.apa.org/doi/10.1037/0003-066X.55.1.68

ケース別:やる気スイッチが入る声かけ10選

ここでは、実際にお子さんのやる気を引き出す具体的な声かけの例を紹介します。
1つひとつの言葉が、子どもの「できるかも」「やってみよう」という気持ちを後押ししてくれます。

注目

ポイントは「命令しない」「比べない」「努力を見つけて伝える」こと。
難しく考えず、今日から1つでも使ってみてください。

勉強を始める前に:自分で決めさせる

「今日は、国語と算数、どっちからやってみる?」

「選ばせる」ことで“自分で決めた”感覚が生まれ、やる気が出やすくなります(自律性の支援)

苦手な問題のとき:あと少しだね、と背中を押す

「ここまでできたってことは、あとちょっとでできそうだね!」

失敗ではなく“できている部分”に目を向けて伝えると、自信を失いにくくなります(有能感の支援)

集中できないとき:ハードルを下げる

「じゃあまず5分だけ一緒にやってみようか」

「ちょっとだけ」で始めると、気持ちの負担が軽くなります。最初の一歩を踏み出せる工夫です。

やめたくなったとき:途中までを認める

「最後までじゃなくても、ここまでよく頑張ったね」

「全部やらなきゃダメ」ではなく、“やった分”に目を向けて褒めると前向きに捉えられます。

終わったあとに:結果より姿勢を認める

「今日もちゃんと向き合ってたね、すごいよ」

テストの点数ではなく、取り組む姿勢や集中力に注目することで、努力が報われる感覚につながります。

やる気が出ない日に:共感を伝える

「今日はちょっと疲れちゃったかな?無理しすぎなくて大丈夫だよ」

「がんばれ!」よりもまず気持ちに寄り添うことで、心の余裕を取り戻せます。

自分から始めたとき:自主性をしっかり褒める

「言われなくても始めたんだね!かっこいいね!」

「自分からやった」ことは強力なやる気の源。大げさでもいいので、しっかり伝えましょう。

成長を実感させる:前との比較は“自分の中で”

「前より計算のスピードが上がってる!すごい」

「選ばせる」ことで“自分で決めた”感覚が生まれ、やる気が出やすくなります(自律性の支援)。

失敗したとき:挑戦をほめる

「できなくても、あきらめずにやろうとしたのがすごいよ」

「できたかどうか」よりも、「やろうとした姿勢」を評価することが自己効力感を育てます。

勉強後:安心感で締めくくる

「今日もおつかれさま。がんばったね。明日も一緒にやろうね」

「やりっぱなし」ではなく、がんばりの終わりにねぎらいを。継続の意欲につながります。

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うまくいかないときの対処法

どんなに声かけを工夫しても、「やらない!」「今日は無理!」と子どもが反応する日もあります。
そんなとき、無理にやらせようとすると、親も子もつらくなるだけです。

まずは「やる気がない」のではなく「疲れているかも」と考えてみる

学校から帰ってきたばかりのタイミング、習い事で体力を使ったあとなどは、子どももエネルギーが残っていないかもしれません。

  • 「今日はちょっと疲れてるかな?少し休んでからやろうか」
  • 「やる気出ない日もあるよね。どうしたらやれそうか、一緒に考えてみようか」

そんなふうに、“気持ちによりそう声かけ”ができると、子どもは安心して次に向かうことができます。

やらせるより、“できた経験”を大事にする

親としては「この時間にやってほしい」と思うのが正直な気持ちですよね。
でも、1ページだけでも取り組めたら、それは立派な前進です。

  • 「1ページやっただけでもえらいよ。よく机に向かったね」

「できた!」という小さな達成感は、子どもの中に“次もやろう”という気持ちの芽を残します

「一緒にやる」が最強のサポートになる

子どもがぐずっているとき、試してほしいのがこのひと言。

  • 「一緒にやろうか」

声かけだけでなく、そばにいて一緒にやってみることで、子どもは「自分だけじゃない」と感じます。
勉強は「ひとりで頑張るもの」ではなく、「支えてくれる人がいる中でやるもの」になっていきます。

教育現場でも「保護者は指導者ではなく“伴走者”であるべき」という考えが広がっています。
隣で見守り、ときに励まし、時々お茶を出すくらいの気持ちで、子どものペースに寄り添っていきましょう。

子どもは毎日同じコンディションではいられません。
だからこそ、「今日はこういう日か」と気持ちに余裕を持って接することが、長い目で見て学習習慣につながっていきます。

注意したいNG声かけとその言いかえ例

子どもを想ってかけた言葉が、逆にやる気をなくさせてしまうことがあります。
その多くは、「正しいこと」だけど「伝え方」がきつくなってしまったパターンです。

ここでは、よくある3つのNG声かけと、すぐに使える言いかえ例をご紹介します。

NG①「早くしなさい!」

これは、ほとんどの家庭で“口ぐせ”になっているかもしれません。
でも、急かされると、子どもは「怒られてる」と感じてしまいます。

言いかえ例:
「〇時になったら始めようか」
「〇分だけゲームして、それから取りかかろうか」

時間を“区切って提案”すると、自分で動くきっかけになります。命令形ではなく、リズムを整える声かけを意識してみましょう。

NG②「なんでこんな簡単な問題ができないの?」

この言葉は、子どもの“自信”を一気に削ってしまいます。

言いかえ例:
「どこでつまずいたかな?一緒に見てみよう」
「この問題、ちょっとややこしいよね。コツがあるかも!」

失敗を責めるより、“次にどうするか”を考える言葉が、子どもの前向きさにつながります。

NG③「○○ちゃんはもう終わってるよ」

他の子と比べられるのは、大人でもつらいものです。
子どもは「自分はダメなんだ」と思い込みがちに。

言いかえ例:
「昨日より早く始められたね」
「あなたのペースで、ひとつずつ進んでるよ」

比べるなら“過去の自分”と。子どもの中にある成長を伝えてあげましょう。

親だって、イライラする日がある

大事なのは、間違えた声かけに気づけたこと。
「つい言っちゃったな」と思ったら、あとで優しくフォローすれば大丈夫です。

  • 「さっきはちょっと言いすぎちゃった。ごめんね」
  • 「頑張ってるの、ちゃんとわかってるよ」

そんな言葉ひとつで、親子の関係はもっとあたたかくなります。

実際の家庭・研究事例に見る効果

「声かけで子どものやる気が変わる」と言っても、実際のところ本当に効果があるの?と感じる方もいるかもしれません。
でも実は、家庭での声かけが学習習慣に大きな影響を与えることが、いくつもの調査からわかっています。

ほめる家庭の子どもほど、学習意欲が高い

ベネッセ教育総合研究所の「幼児期から中学生の家庭教育調査・縦断調査」では、次のような傾向が見られました。

  • 小1時に「親が叱るよりも褒めることが多い」と答えた家庭の子どもは、小2時点で「自分から進んで勉強する」割合が高い
  • 「最後までやらせるようにしている」家庭の子どもは、困難にぶつかっても粘り強く取り組む傾向があった

つまり、日常の中で努力や工夫を認めてもらう経験が、学ぶ力につながっているということです。

参考:ベネッセ教育総合研究所「幼児期から中学生の家庭教育調査・縦断調査」
https://berd.benesse.jp/berd/center/open/report/gakukyo_2021/

文部科学省や自治体も「声かけの力」に注目

佐賀県教育委員会は、家庭学習支援の資料の中で、保護者に向けて4つのポイントを示しています。

  1. 生活リズムを整える
  2. 学ぶ雰囲気をつくる
  3. 小さな「がんばり」を見つけてほめる
  4. 家族の対話を大切にする

中でも3番目の「がんばりの発見」は、声かけの質を高めるヒントです。

例えば「1人で机に向かえたね」「昨日より早く終わったね」といった、“行動の変化”や“小さな努力”を拾って伝えること。
これは、声かけが「子どもの自信を育てるきっかけになる」と実践的に示しています。

参考:佐賀県教育委員会「家庭学習の手引き」
https://www.pref.saga.lg.jp/kyouiku/kiji00397137/3_97137_333334_up_62w16ysi.pdf

伴走する親の存在が、子どもを支える

児童精神科医の宮口幸治氏(立命館大学)も、「親は“指導者”よりも“伴走者”であることが大切」と提言しています。
子どもにとって、「そばにいてくれる」「信じてくれる」存在がいることは、安心して学ぶための土台になります。

たとえ黙って見守るだけでも、「見てくれている」と感じれば、子どもは不思議とがんばれるものです。

日々の声かけやちょっとした関わりが、子どもの未来を育てていく――。
それは、特別な教材や方法よりも、ずっと大きな力を持っています。

参考:PRESIDENT Online「宿題しなさい!」は逆効果…児童精神科医が勧める「自主的に勉強する子が育つ親の声かけフレーズ」
https://president.jp/articles/-/72947

まとめ:「言葉の力」で家庭学習は変わる

家庭学習のやる気を引き出すのに、特別な道具や高価な教材は必要ありません。
子どもにかける、たったひと言の「声」が、やる気スイッチを入れる力になるのです。

大切なのは、
「できなかったこと」より「がんばったこと」に目を向けること。
「比べる」より「寄り添う」こと。
そして、「勉強させる」より「一緒に向き合う」こと。

声かけは、今日から変えられます。
たとえうまくいかない日があっても、一言でも前向きな言葉をかけてあげることで、子どもはまた挑戦する力を取り戻します。

「うちの子にはどんな言葉が響くかな?」
そんなふうに考える時間が、親子の学びの時間になるのかもしれません。

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